あなたは【護摩祈祷】というものをご存じでしょうか?
【護摩祈祷】の様子はテレビ等で紹介されることもあるので、すでにご存じかもしれませんね。
当院と同じ宗派に『成田山新勝寺』・『川崎大師平間寺』・『高尾山薬王院』などの有名な寺院があります。
これらの寺院では毎日【護摩祈祷】を行い、多くのお坊さんによって参拝者の願い事を成就させるべく祈願が行われています。
【護摩祈祷】とは、真言宗を開いた弘法大師空海様がその時代に唐から持ち帰った祈願の方法で、護摩壇と呼ばれる壇上で火を焚いて、お坊さんが仏様と向き合いご利益を頂くものです。
『護摩』という言葉は、インドの古い言語であるサンスクリット語で『焼く』を意味する言葉である【ホーマ】に由来しており、私たちの煩悩を焼き払うことを意味します。
弘法大師様が日本に伝えて下さった護摩というものが、長い時を経て令和の時代まで受け継がれ、これまでたくさんの人々の願いを成就させています。
ところで、護摩祈祷ではなぜ『火』を使うのでしょうか?
そして、私たちにとって『火』とは一体何なのでしょうか?
ギリシャ神話では、『人間が繁栄するようになったのは、神様から【火】を盗んだからである』と語られています。
人と動物の大きな差は【火をコントロールできるかどうか】にあります。
火というものは、それくらい重要であり『人類の宝物』といえます。
イスラエルの北部にある約79万年前の遺跡から『炉』が発見されました。
これが世界最古の炉の遺跡なのだそうです。
アフリカから北上した原人が寒さに対応するために火を使い始めた可能性があり、それだけではなく原始に生きる人々が『祈る場所』、あるいは火を灯す『聖なる場所』として使っていたと考えられています。
古代に火を拝む『拝火教(はいかきょう)』という宗教があり、人類を更なる高みへ昇らせるために火を崇拝したと言われています。
やはり『火』というものは私たち人類にとってずっと【神聖で特別なもの】だったんですね。
私たち真言宗の僧侶も、『火』を《仏様と私たちを通じ合わせてくれるもの》また《私たちを清めるもの》として【非常に重要でありがたいもの】として捉えています。
ですから、護摩祈祷を行うに際には、火を焚くために【護摩壇】という専用の壇を必ず用います。
そして、護摩壇の中央にある炉を『仏様のお口』と考え、炉へ投じる薪を『私たちの煩悩(ぼんのう)』、炉から燃え上がる炎を『仏様の智慧』として見立てます。
護摩祈祷を行う時には、護摩壇の正面にお座りになっているお導師様がいろんな修法を行います。
智慧の炎へ様々な供物を投じてお供えをし、それがご本尊様に届き、私たちを正しい道へと導き幸福を与えて下さいます。
また、お導師様は修法を行う中で「以我功徳力、如来加持力、及以法界力、普供養而住」という【三力偈】と呼ばれる文言をお唱えします。
【三力偈】の三つの力とは、
- 《以我功徳力》修法を行なったり真言をお唱えすることによる功徳の力
- 《如来加持力》仏様が与えて下さる大いなる力
- 《及以法界力》お導師様の周りにいる僧侶のお経を唱える力や、参詣の皆様の祈りの力
のことをいいます。
護摩祈祷を行うことで、この三つの力が《普供養而住》となるように、つまり『その場にいる人達だけではなく、全ての世界に行き届きますように』と仏様にお願いをしているのです。
当院でも護摩祈祷を行い、これまでに多くの檀家様や信者様の為にご祈祷をしてまいりました。
あなたも、ご本尊様の大威力を享受して、健康で福徳を得られるようにお近くの寺院にお参りしてみてはいかがですか?