日本の宗教観は、世界からみれば非常に【独特】です。
日本では、キリストの誕生日であるクリスマスをお祝いし、年末にはお寺で除夜の鐘の音を聴き、新年を迎えれば神社へ初詣に行きます。
日本人は、年末から新年にかけて複数の宗教の行事や慣習をハシゴするんです。
外国の人から「日本人はなんて節操がないんだ!」と言われるかもしれませんが、日本人にとってはごく普通のことであり、日本人特有の【宗教に対する寛容性】といってもよいでしょう。
宗教観の違いというのは【食】の違いに例えられるのではないかと思います。
例えば、和食と洋食の違いをみてみると、洋食には【メインディッシュ】がありますが、和食には【メイン】という考え方そのものがありません。
伝統的な懐石料理であれば、先付から始まり水菓子に終わるまで【メイン】という考えで出される料理はありません。
この【食】と同じように、日本の宗教観はある特定の宗教を特別に扱うのではなく、すべての宗教に共通する倫理観や哲学といったものを大事にしているのではないでしょうか。
日本の仏教は非常に特異な形をとっています。
まず、日本のお坊さんは結婚が許されていますが、これは他の国のお坊さんからすれば【あり得ないこと】です。
また、修行中は謹んで精進料理を頂きますが、それ以外の日常生活では肉や魚も食べています。
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もしも、これを仏教発祥の地であるインドのお坊さんが見たら「日本の仏教なんて【仏教】じゃないよ」って怒るかもしれませんね。
インド、東南アジアを中心とする仏教を上座部仏教といいます。
この地域では戒律の遵守、経典の学習、瞑想の修行などを重んじています。
一方で、シルクロードを通って中国から日本に伝わって来た仏教を大乗仏教といい、どちらかといえば【先祖供養】や【礼節を重んじる】ということを重要視しています。
もし私たち日本人が築いてきた約1,500年の歴史がある仏教のことを「それは仏教ではない」という人がいたら、じゃあ何と呼べばいいのでしょう?
そうなると、『日本の仏教』と呼ぶしかなさそうです。
日本の仏教は、中国の儒教や道教、日本の神道などの影響を受けて『日本に適した形』に洗練されてきました。
インドを含む東南アジアの仏教であれ日本の仏教であれ、実践の方法などは違っても、根底にあるものは同じお釈迦様が説いた素晴らしい哲学や教義なのです。
仏教におけるインドと日本の違いは、例えて言うなら『カレー』のようなものです。
『カレー』もインド発祥の食べ物ですが、インドのカレーは非常にスパイシーで辛いです。
一方で、日本のカレーは比較的まろやかで甘いものが多いですよね。
調理の方法は違うかもしれませんが、具とルーを入れてナンまたはご飯で食べるというスタイルは同じです。
じつは、カレーに関する興味深い実験がされています。
二つの部屋を用意し、一つは日本の気候のような【ジメジメした暑さ】の部屋に調整し、もう一つはインドの気候のような【カラッとした暑さ】の部屋に調整します。
両方の部屋でいろんな国籍の人達にインドのカレーと日本のカレーを食べ比べてもらいました。
すると、ジメジメした暑さの部屋では日本のカレー、カラッとした暑さの部屋ではインドのカレーが美味しいと答える人が多かったそうです。
このように【食】というのは、その土地の気候や風土により大きく左右されます。
宗教観もまた同じように、気候、風土、歴史、文化、伝統、といったような様々な要素でその国に適した形に変化していきます。
宗教の本質は【何かを一心に信じる】ことだけではなく【安心を得る】ことでもあります。
世界にはたくさんの国や地域があり、そしていろんな文化がありますので、安心を感じる方法は一つじゃなくてもよいのではないでしょうか。
インドと日本の仏教では実践の方法が違いますが、その本質の部分は同じなんです。
今、日本では宗教離れが進んでいますが、この記事を読んで「宗教って何だろう」「仏教って何だろう」と宗教というものに興味を持って頂けたら嬉しく思います。