仏壇にはいろんな『お供え』をします。
例えば、あなたの親戚の家で法事をする時、あるいは正月やお盆の挨拶などで訪問した時に【お供物】を持って行くこともあるでしょう。
【お供物】を持って行く場合には『のし紙』をつけるのが一般的です。
そして、この『のし紙』があるおかげで、仏壇へお供えする時に【1つの迷い】が出てしまいます。
それは、
『お供えする時の【向き】はどうすればいいか?』
ということです。
いざ【お供物】を供えようとして「えっと・・・どの向きに供えればいいんだろう?」と仏壇の前でアタフタしないように、ぜひ最後まで読んでみてください。
《どこへお供えすればいいの?》
お供えをする【向き】を考える前に、まず【どこへ】お供えをするのかを決めなければいけません。
お供えをする場所は【どこでもよい】というわけではありませんのでご注意下さい。
お供え物が小さなものであれば仏壇の中に供えましょう。
しかし、仏壇の中の《最上段》はご本尊様が鎮座される場所なので、お供えをするのは《中段以下》が原則です。
お供え物が菓子折などのように少し大きい場合は『膳引き』という仏壇の引き出し台に乗せて供えてもかまいません。
また、『膳引き』にも乗せられない場合は、仏壇の前にテーブルなどを置いて供えてください。
ちなみに、お供え物を置くスペースがないからといって【仏壇の上】に供えることは避けましょう。
仏壇の上に物を置くことは、【ご本尊様の頭の上】に物を置くということであり、それはご本尊様に対して失礼にあたります。
ですから、仏壇の上には、お供え物だけではなく遺影や祈祷札なども置かないようにして下さい。
《お供えをする時の【向き】はどうすればいい?》
仏壇へ供える【お供え物】というのは、当然ですが『仏様のため』のものです。
ということは、のし紙に書いている文字が仏様から見て読めるようにするべきですよね?
ですから、お供物は仏様が文字を読める向きにして供える・・・というわけではありません。
じつは反対なのです。
お供物は、
私たちから見て文字が読める向き
にして供えます。
仏様のためのお供物なのに、なぜ私たちから見て文字が読める向きで供えるのでしょう?
仏教には『回向(えこう)』という考え方があります。
私たちが善い行いをすると、そのたびに【功徳(くどく)】という幸福やご利益が得られて、それがどんどん積み上がっていくと言われています。
法事をしている時は、私たちが積み上げた【功徳】を故人に対して施し、それによって故人を供養するのです。
そして、じつは【功徳】を受け取った故人も同じように、故人が積み上げた【功徳】を私たちに対して施してくれます。
つまり、供養することは、私たちと故人で『お互いに功徳を施し合っている』ということなのです。
お互いに積み上げた功徳を【回し向け合っている】から『回向』というわけですね。
ですから、結果的に私たちの方にも功徳が回し向けられてくるので、最初から私たちから字が読める向きに供えているのです。
ちなみに、仏様へお供えした後に下げたお供物のことを『お下がり』といいますが、これは仏様が私たちに【下さったもの】という意味でそう呼ばれています。
《仏様は【7分の1】だけお供物を受け取る?》
もしかすると、「私たちと故人でお互いに功徳を回し向け合っているのなら、故人を尊重する意味でも、やはり【お供物】は『故人から見て字が読める向き』に供えるべきでは?」と思う人がいるかもしれません。
それでも、【お供物】は『私たちから見て字が読める向き』で供えるのです。
じつは、仏様にお供えをすると、
『仏様は、供えた物の【7分の1】だけを受け取って、残りは私たちに向けて供え返す。』
と言われています。
これを『七分獲一(しちぶんぎゃくいつ)』といいます。
ですから、故人にお供えをしても、故人は「私は少しだけでいいから、あとはみんなで分けてね。」と、お供物の【7分の1】だけを受け取って、残りの【7分の6】は返してくれるのです。
つまり、お供物のほとんどが私たちのためにあるようなものなのです。
それで、お供物は【私たちから見て字が読める向き】で供えているわけです。
《まとめ》
仏様へ【お供物】を供える時には『私たちから見て字が読める向き』で供えましょう。
仏教の『回向』や『七分獲一』という考え方から、仏様にお供えをしてもそのほとんどは私たちに向けて返ってくるのです。
それくらい仏様や故人は【私たちのことを優先的に考えてくれている】ということです。
そんな仏様や故人に感謝しながら、心を込めてお供えをし、手を合わせましょう。