毎年の【8月13~16日】は全国的に『お盆』と呼ばれる期間です。
東京など一部の地域では【7月13日~16日】がお盆の期間であり、こちらは『七月盆』とも呼ばれています。
『お盆』といえば、《仕事や学校などをお休みする期間》という認識の人も多いのではないでしょうか?
実際、お盆になると大勢の人が帰省をしたり旅行へ出かけたりするため、公共交通機関などは大混雑します。
しかし、お盆は本来、あなたがお休みする期間ではなく、ご先祖様がお休みする期間です。
この記事では、お盆の意味や由来、そしてお盆の過ごし方についてわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
《お盆の意味》
亡くなられた人は、49日を過ぎるとあの世(仏様の世界)に旅立たれ、あの世では【仏道修行】を続けるといわれています。
あの世での修行は、基本的には休まずにずっと続けるといわれていますが、ご先祖様だって修行ばかり続けていると疲れてしまいます。
そこで、あの世では一年に一度『修行をお休みする期間』があるそうです。
これが、いわゆる『お盆』です。
つまり、お盆というのは私たちがお休みするのではなく、本当は【ご先祖様がお休みする期間】ということなんです。
お盆になると、ご先祖様はお休みをするために、一番くつろげる場所である《自宅》にお帰りになられます。
私たちは、お帰りになったご先祖様をもてなし、ゆっくりとくつろいでいただき、法要を執り行って『お盆の供養』をします。
《お盆の由来》
お盆は、正式には『盂蘭盆(うらぼん)』といいます。
盂蘭盆という言葉は、インドの古い言語であるサンスクリット語の【ウランバナ=逆さ吊り】という言葉に由来しています。
お盆という言葉の語源が【逆さ吊り】という意味なのです、逆さ吊りなんてずいぶんと『苦しそう』ですよね?
じつは、この『苦しそう』であることがお盆が始まる【重要なきっかけ】だったのです。
仏教を世に広めたお釈迦(しゃか)様には、10人の優秀なお弟子様がおられました。
その中に『目連尊者(もくれんそんじゃ)』というお弟子様がおられ、死後の世界を見ることができる不思議な力【神通力(じんつうりき)】に秀でた方でした。
ある時、目連尊者は他界した自分の母親が今頃どのように過ごしているかが気になり、神通力で死後の世界を覗いてみました。
すると、なんと目連尊者の母親は《餓鬼道(がきどう)》という【飢えと喉の渇きの苦しみを常に味わい続ける世界】で、それはそれは苦しそうにしておられました。
これを見た目連尊者は、大急ぎでお釈迦様のもとを訪ね、餓鬼道で苦しむ母親を救うため、必死でお釈迦様に教えを請いました。
必死に訴えかける目連尊者に対して、お釈迦様は、
「目連よ、よく聞きなさい。お前の母親は心からお前を愛し、一生懸命に育て上げた。しかし、お前の母親は『我が子のことだけが大事』で他の者には施しをしなかった。これが【慳貪(けんどん=むさぼりのこと)の罪】となって、お前の母親は餓鬼道に落ちたのだよ。だが、餓鬼道から救う方法はちゃんとある。安居(あんご)の終わる7月15日に多くの僧を集め、食事をふるまい、母親のために供養をしてもらいなさい。そうすれば、きっと餓鬼道から救い出せるであろう。」
とおっしゃいました。
目連尊者はこれを忠実に実践し、もう一度あの世の様子を覗いてみると、餓鬼道の苦しみから解放されて仏様の世界で【とても安らか】に過ごしている母親の姿が見えました。
目連尊者はお釈迦様に許しを得て、『7月15日は死者を供養する日』と定めて、その後も苦しむ死者を救い出すために供養を続けました。
これが現在まで『お盆供養』という形で行われています。
《精霊棚をつくる》
お盆を迎えるにあたり、帰ってこられるご先祖様専用のお席として『精霊棚(しょうりょうだな)』をつくります。
まず、仏壇とは別に座卓などを用意します。
用意した座卓などの上に【まこも】を敷き、仏壇から全ての位牌を取り出して、それらを【まこも】の上に乗せて安置します。
座卓などには、位牌の他にも、線香、花、灯明、供物などを一緒に供えます。
また、精霊棚の特徴的な飾り付けである【精霊馬】と【精霊牛】を供えます。
- 【精霊馬】とは、胡瓜(キュウリ)に割り箸などを刺して、『馬』に似せて作ったものです。
- 【精霊牛】とは、茄子(ナス)に割り箸などを刺して、『牛』に似せて作ったものです。
あなたもこの精霊馬と精霊牛は見たことがあるんじゃないですか?
これらは、ご先祖様があの世とこの世を行き来する時に乗る動物だといわれています。
ご先祖様は、
- あの世から自宅へお帰りになる時には、精霊馬に乗ってできるだけ早く帰って来られる
- 自宅からあの世へお戻りになる時には、精霊牛に乗って名残り惜しみながらゆっくり戻って行かれる
のだそうです。
精霊馬と精霊牛は一つずつ作れば大丈夫です、仏様全員分を用意する必要はありません。
以上のような飾り付けをすれば、基本的な精霊棚は完成します。
精霊棚の作り方は宗派や地域によって違いますので、それぞれのやり方にしたがって飾り付けをして頂いてかまいません。
お盆期間中は、あなたが心を込めて作った『精霊棚』の上で、ご先祖様はゆっくりとくつろいでお休みになっているのです。
ですから、お盆期間中は毎日欠かさずお線香やお供物をお供えして手を合わせるようにしましょう。
精霊棚におられるご先祖様も、あなたがいつも気にかけてくれているのを嬉しく思うことでしょう。
《迎え火と送り火》
ご先祖様は、あの世から直接家に帰ってこられるわけではなく、まず『お墓』を経由してから家に帰られるそうです。
そこで、私たちはご先祖様をお墓までお迎えやお見送りに行くのです。
ご先祖様をお墓までお迎えに行くことを『迎え火(むかえび)』といいます。
迎え火は、
- 提灯とロウソクを持ってお墓へ行く
- お墓の前で火を焚く
- その火へご先祖様に宿って頂く
- 火をロウソクに移す
- 火のついたロウソクを提灯へ移す
- 提灯へ移したロウソクの火を消さないように家に持ち帰る
- 家に着いたら、提灯の火を精霊棚のロウソクに移す
- 提灯の火を消す
という手順で行います。
これでご先祖様を精霊棚に迎え入れることができました。
お盆の期間は精霊棚にいらっしゃるご先祖様と一緒に過ごします。
お盆が終わる日には、あの世にお戻りになるご先祖様をお墓へお見送りに行きます。
これを『送り火(おくりび)』といいます。
送り火は、
- 精霊棚のロウソクに火をつける
- 精霊棚のロウソクを提灯へ移す
- 提灯へ移した火を消さないように持ってお墓へ行く
- お墓の前で提灯のロウソクの火を消す
という手順で行います。
送り火が終われば、先ほどの精霊棚は片付けてかまいません。
《お盆はご先祖様と一緒にお休みしましょう》
お盆になると、ご先祖様が【あの世の修行をお休みする】ためにあなたの家に帰って来られます。
そして、私たちは、【ご先祖様と一緒に過ごす】ために仕事や学校をお休みします。
ですから、お盆は本来【あなたがお休みするため】のものではないのです。
お盆はできるだけ家にいて、ご先祖様と一緒にお休みをしましょう。
それが、本当のお盆の過ごし方です。
とはいえ、せっかくのお休みですものね、あなただって外出をしたいですよね?
では、外出をしてもかまいませんので、その時には必ず精霊棚におられるご先祖様に「行ってきます」や「ただいま」といった挨拶をするようにしてください。
他のご家族に接するのと同じように、精霊棚におられるご先祖様を気にかけてあげてください。
とにかく、お盆期間中は『家にご先祖様がおられる』ということを忘れないようにしてくださいね。
〖金剛院からのお知らせ〗
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